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校長の奥野正己先生 |
「創立123年の学校ですが、学校の特色が出せていないと思いました。生徒による授業評価も想像以上に低かったですね」
2010年4月に大阪府立高校の校長から大商学園高等学校の副校長として赴任された奥野正己先生はこう語る。阪急宝塚沿線には大商学園と競合となる学校が少なく、尼崎、神戸などからのアクセスも便利なため、半数の生徒が兵庫県から通う。現在のところ生徒は集まっているが、この先私立高校をとりまく環境は厳しくなる一方である。
「今までは管理職による授業参観も教員との面談もありませんでした。まるで鎖国状態でした」
大阪府では府立高校の学校改革が急ピッチで行われている。厳しく成果を問われる中で学校経営をしてきた奥野先生から見ると、まるで時間が止まっているように感じられたという。この状態を何とかしなくてはいけない。様子を見ている余裕はない。奥野先生はすぐに動き始めた。
◆データに基づく対応
生徒の学力状況は中学校レベルの学習がしっかり身についていない者もかなりの数に上る。生徒の満足度調査もかなり低い。入学後学力が伸びている生徒も少ない。この状況を変えるために、授業改善に取り組むことになる。
保護者への授業公開も始まった。親の立場から見れば子どもの授業の様子を見たいのは当然である。今までやってこなかったとはいえ、その必要性を理解すれば先生方は協力的であった。もともと生徒指導や部活指導はしっかりやってくれている先生方である。理解していただければ、決して後ろ向きではないのだ。問題は具体的にどうするかである。学力面では、外部の学力試験で生徒の成績を1ランク上げるというように具体的な指標を明確に示す。そのために、どうするかは先生方に考えてほしい。
とはいえすぐに答えが見つかるわけはない。そこで、実際にいろいろな学校を視察して学んでもらう。同じ大阪の学校ではなかなか情報を教えてはもらえない。大阪府外の学校へ積極的に派遣をすることにした。
 | 学校を取り巻く環境の変化は速い。時間をかけて徐々に変えていけばよいという発想では学校改革はうまくいかない。今ある問題を意識して素早く具体的な行動につなげる必要がある。とはいえ、先生方の意識を変えることは、簡単ではない。データをもとに現状を客観的にとらえることがその第一歩になる。大阪大商学園でも授業評価や満足度調査、外部の学力評価試験などさまざまなデータを活用している。また、先生方に要求するだけではなかなか具体的な動きにはつながらない。先生方に他の学校がどんな取り組みをしているかといった情報集めなど先生方の学びのためのバックアップも奥野先生は積極的におこなっている。 |
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