授業に始まり授業に終わる

馬場康雄(一宮市教育長)


1 学力は低下しているか

(1)算数・数学での比較
愛知県総合教育センター資料が参考になる。
学力が下がっているのは論争前の問題である。時間数や内容も少なくなれば下がるのは当然。
(2)学習意欲の低下
本当に学習意欲は下がっているのだろうか。多数の子どもが塾に行っている実態をどうとらえるか。学校で学んだ後も勉強をするために行っている。

2 生徒に対して求めたもの

(1)なぜ学ぶのか、何を学ぶのか
○全力で取り組む姿勢、自分の能力の限界までの挑戦

どうせこんなことは使わなくなるよ、でもなぜやるのかと子どもに問いかけた。
かつての業者テスト(中統)では、附属に平均点で4,5点の差がつくほどの力が子どもについた。偏差値が70を超えることもあった。ある意味では異常な状態である。今日は、自虐的自慢話をしてみたい。受験教育、一斉指導を徹底してきたものとして今の教育について語ってみる。

3 学習指導
(1)生徒の意欲をどこまで高めることが出来るのか

できない子どもがいるのは自分の投影であると肝に銘じて授業をした。
すべての子どもに教科書程度は理解させたい。
自分の足で学校に来られる能力のある子どもが数学ができないわけがない。

(2)生徒の学力をどこまで高めることが(到達)できるのか

誤答分析が大切。すべてのテストで正答率を確かめた。その子がなぜそういう間違いをするのかを知ること。
狭義の学力を高めるポイントは「量」である。しかし、できない子どもにやれ、やれと言ってもやらない。少なくとも子どもが授業が分かっていないと、つめこもうと思ってもつめこめない。
子どもを把握すること。受け手の認知がどうなっているのかを把握しておく必要がある。

4 授業づくり

(1)指導計画
配当時間と指導時数
この問題をどれくらいの時間をかけてやるのかを考える。簡単なものは徹底する。難しいことに時間をかけない。伸びる子どもは時間を上げればできる。つまづく子どもには徹底する。
(2)目標の設定(教材と生徒)
○学習内容の徹底のために
分かる→できる→身に付く
本当にできるまでに時間がかかるものだ。

5 指導技術
(1)他の指導技術に学ぶ
(2)集中力
集中するとはどういう状態なのかをきちんと子どもに説明する。練習は1問、2問程度出来ただけではダメである。集中して短時間で10問程度を一気に解く力が必要である。いっさいよそ事をさせない。
(3)板書とノート指導
板書を写させることは無駄。自分で解いた方が良いことを実感させる。自分の頭で解かせる。下位の子どもはノートを家で見ない。授業中に必ず分からせる。

6 学習効果を高めるために

(1)指導方法・学習形態の工夫
黒板で答え合わせをすることの非能率。右の人は左の人に言いなさいなど、多くの子どもができるように工夫をする。
トップクラスの生徒にはスピードが必要。方程式の利用題などは2分くらいでやる必要あり。

大切なことは教師は全員をいつも見ていると子どもに思わせること。サッカー選手と同じ。全体を見ていなくてはいけない。教師が黒板に向かって書くという危険な行為をしない。

7 思考力・構成力と記憶力

(1)追思考
自分の頭の中で校正していないとダメ。説明した人と同じようにやってみよう。黒板をうつさせない。
(2)追構成・再構成
定義を理解して自分で構成していく力。自分でもう一度構成できるかがポイント。

8 生徒と教師の信頼関係
学級経営と教科指導にはすごい関連がある。授業を持たない担任でも子どもが変わっていくのはなぜか。
根本的なものは教師に対して信頼をいだくかどうかだ。